オニバス
鬼蓮
スイレン科オニバス属

 葉の大きさが2mを超える巨大な1年草の水草。成長のスピードは
芽生えてから2ヶ月でこの大きさになるほどで、驚くほどである。葉や
茎に大きなとげがあり、これが名前の由来となっている。花は葉を突
き破って水上に咲く。花の色は鮮やかな紫色で、4Cmほどの大きさ
で、葉の大きさと比較すると意外と小さい。昼に咲いて夜には閉じる。
沼やため池に生え、かっては普通にみられたが、現在は絶滅危惧種
に指定されている。
ぼんやりと見ていたテレビのローカルニュースで、オニバスが
開花した模様を伝えていた。アナウンサーの告げたその地名は、
私の住む町の隣町にある溜池のように聞こえた。その池の名は
ありふれた名であり、ほかの町の溜池かもしれないと思っては
みたものの、気になって地図を見たり、詳しくオニバスについ
て調べてみたり。それによるとオニバスは絶滅危惧種に指定さ
れてるそうだ。昔はごく普通にため池や堀で見ることができ、
水面を埋め尽くすほど繁殖するので害草になっていたそうだが。
もっとも実は食用になるそうで、少しは役に立ってたみたいだ
が。調べれば調べるほど興味が湧いて来て、週末になるのが楽
しみになり、車で近くまで行けるのだろうか、行けないのなら
どこに車を止めればいいのか・・・。私の中でオニバスの池は
隣町の池であるという確信に変わっていた。
 長い一週間が終わり、待ちに待った週末の土曜日の朝、とり
あえず望遠レンズを装着したカメラをバックに入れて目的の池
に向かった。池までは車で10分とかからない距離である。池
に近いと思われるコンビニに車を止め(もちろん無断で)池に向
かう。地図上では団地のすぐ東側となっていたので、まず、そ
の団地に行く事にした。
 団地に入り西へまっすぐ抜けたところにその池はあった。土
手は雑草に被われている。予想どおり小さな池であった。低い
土手を少し登ると水面が見えた。その水面はあまりにもあたり
まえかのように、それが当然かのように、オニバスで被われて
いた。絶滅危惧種に指定されていることを拒否するようにその
水面を占領している。そして、その主張をまわりの風景が何の
疑問も抱かずに包み込んでいる。
 3羽の白鷺がいた。オニバスの葉の上に。その大きな体を何
の苦もなく支えている。絶滅危惧種という言葉の持つ弱々し
イメージを精一杯の力で押し返している。この池のオニバスは
自分たちの仲間が各地で消えていってるのを知っているのだ
ろうか。
 葉に比べて小さいその花は自らの葉を突き破り鮮やかな紫
の花びらを開いている。オニバスの名はこういうところからも
付けられたのであろう。
 このオニバスはもう直ぐ、その種を池の底に沈め枯れていく。
池は水面を取り戻し静けさが帰ってくるだろう。池底に埋まった
種子は来春また芽をだし花を咲かせることができるだろうか。